自分から殻を脱いだヤドカリ

 ヤドカリは柔らかい腹部を守るために、貝等の殻に入ります。
 従って、殻から出る事は殆どありません。 しかし、殻を脱ぐ時があります。

@今使用している殻から、別の殻に引越しをする時。
 
この作業は殻を見つけ、殻の大きさや中の様子を確認し、引越しを決心すると、ほんの一瞬の間に完了します。しかしこれは、強いヤドカリに追出された場合には話が変ってきます。
 
強いヤドカリの方は、追出したヤドカリの殻を確認した後、一瞬の間に引越しをしますが、追出された方のヤドカリは、殻から引出された後、強いヤドカリが引越しを済ませ、空になった殻を置いて立去るまで、無防備の状態になります。
 
こんな時のヤドカリは、どんな気持ちでいるのでしょうか。

A脱皮の時。
 
これについては、詳しく観察していませんので、はっきりした事は言えません。

B酸欠などで、弱った時。
 
海辺の人気者ヤドカリは、危険を感じると殻の中に引っ込むため、誰でも簡単に捕まえる事が出来ます。そんな訳で沢山のヤドカリを捕まえて、小さなビンやビニール袋に入れて持ち帰る人がいますが、家に着いてみると殆どのヤドカリが殻から出て、死んでしまったり、弱っている事があります。
 
これは、小さな入れ物に沢山のヤドカリを長い間入れておいたため、海水中の酸素が無くなり、また水温が上昇する事で、ヤドカリ達は苦しくなって、自分から殻を脱ぎ捨てたものと思われます。


 
しかし自然界の中で、自分から殻を脱いでタイドプールの中に消えていったヤドカリを見た事があります。
 
何故そんな行動を取ったのかは分かりませんが、その時の状況を説明しましょう。

 
ヤドカリ達を捕まえて海辺に置くと彼らは、どのような行動をするのだろうと考えました。  一番期待する答えは、殻から身を乗り出したヤドカリは「海」を目指して歩き出す・・・という光景です。
 
しかし実際にやってみると、「海」という目標にはまったく関係なく、歩き出すようです。そして最初に置かれた一番目立つ場所から、全部のヤドカリがやがていなくなります。
 
彼らヤドカリ達にとって、自然のリズムの潮の干満による潮間帯の認識しかなく、なぜか今は空気中にいるけれども、時間が来れば潮が満ちてきて海に戻れるし、とりあえず乾燥と暑さから身を守る場所を求めて歩き出すのではないかと考えてみました。
 
これならある程度納得できますが、中には岩を登り始めるものもいましたので、この考えも怪しいものです。

  
こんな実験中に、一匹のヤドカリを追いかけてみました。
 
大き目の殻に入ったホンヤドカリです。
 
このヤドカリは、かなり長い距離を移動し、海水を満杯にしたタイドプールの縁にたどり着きました。ヤドカリ君・・・良かったね・・・と、早く安全なタイドプールに入りなさいと思いましたが、ヤドカリの動きはそこでピタリと止まりました。
 
タイドプールを目の前にして何を思ったのか、ヤドカリは殻に引込んでしまったのです。

 
タイドプールの脇に一つの貝殻が何気なくおいてある状態が、しばらくの間続きました。やがて貝殻の縁がほんの少し持ち上がり、中にいたホンヤドカリが顔を出しました。当然そのままタイドプールに入るものと確信していました。
 
ところが、予想外のことが起きたのです。
 
殻から顔を出したホンヤドカリは、何を思ったのか貝殻をそこに残したまま外に出てきたのです・・・自分から・・・。 そしてタイドプールの中に入って行きました。
  タイドプールの水は透明度が高く、水面から反射する光をカットすれば、
底まできれいに覗くことが出来ました。裸のヤドカリは、V字型に切り込まれたタイドプールの側面をしばらく這い回っていましたが、隅の方に付いていたカサガイに抱きついて動かなくなりました。
 
それから先はどうなったかわかりません・・・・・。タイドプールの縁には、貝殻が一ついつまでもおいてありました。

   
 @タイドプールのふちまで来たヤドカリは、  殻の中に一度 引込みました。  Aしばらくして殻から顔を出しましたが、
  なぜか ヤドカリは 思わぬ行動に出ま
  した。
   
 Bヤドカリは殻をそこに置いたまま、殻の
  前のタイドプールに入って行きました。
 Cタイドプールの中をしばらくの間、動き
  回っていましたが、一匹のカサガイ
  しがみ付 き動
かなくなりました。