ホンヤドカリの宿換え

春夏秋冬季節に関係なく海辺に行っていつでも簡単に捕まえられるのがヤドカリです
  潮間帯より上に 打ち上げられた貝殻は別ですがタイドプールや 潮間帯の場合潮に取り残された
貝殻を拾ってみると、結構ぼろの貝殻でも、ヤドカリが使っているのに驚かされます。

  どんなにぼろで汚い貝殻でも、そこに入り 柔らかい腹部を守らなくては外敵に襲われるという危険性
があるため仕方ありません。
  ヤドカリは 脱皮を繰り返し成長しますが、宿の貝殻は 成長しないので、成長するに従って殻を換えて
いかなくてはいけないのです。
  空の貝殻が見つかれば、非常にラッキーです。時には巻き貝を襲い、その殻に入る場合や仲間を襲
い、殻を奪う場合があります。 いや通常行うのは最後の 「仲間を襲い、殻を奪う方法」 かもしれませ
ん。

  関東地方の海辺で捕まえるヤドカリの多くは、ホンヤドカリとイソヨコバサミというヤドカリですが、よく
観察するとほかの種類もいるので、そういうヤドカリを探すのも楽しいものです。

       
    タイドプールに集まるホンヤドカリ               イソヨコバサミ

(1)海辺の音を観察して、発見したこと


  海辺に近付くと、波の音が聞こえてきます。やがて波の音に混じって、ピチピチ、パチパチ、ブツブツと
いった奇妙な音が聞こえてきました。
  時々、パチン・パチンとテッポウエビが威嚇してきます。すると、あっちでもこっちでもパチン・パチンと
いう音が聞こえてきました。
  中には、パツン・パツンといった渋い音を出すものもいます。
  タイドプールの側で休んでいると、カンカンカン・カンカンカンと、何かをたたいているような音が聞こえ
てきました。
  何だろうと思い、まわりを見渡しても、音の正体は分かりません。しばらくするとまた、カンカンカン・カ
ンカンカンという音がしました。
  意外なことに、その音はタイドプールの中から聞こえてくる様です。
  タイドプールをそっとのぞき込むと、相変わらずヤドカリ達がのんびりと動き回っています。 しばらくタ
イドプールを覗いて見ていましたが、特別変った様子も無いので、ほかのタイドプールを覗こうとしたとき
またカンカンカンという音がタイドプールの中から聞こえてきました。
  音がしたと思われる場所に目を移すと、2匹のヤドカリが向かい合っているのに気付きました。
  一方のヤドカリが、相手のヤドカリの殻の 入口を両方のハサミで掴んでいます。 相手は殻の中に引
っ込んでいました。 カンカンカンという音がまた聞こえました。
  殻を掴んでいたヤドカリが、自分の殻を相手の殻にぶつけたのです。
  何回か このような行動を繰り返していると、今迄引っ込んでいた相手のヤドカリが 顔を出しかけたと
き、攻撃していた方のヤドカリが 相手のヤドカリの歩脚を掴んで、さっと引っ張り出しました。  空になっ
た相手の殻の口から覗き込みズボンを脱ぐような感じで殻から出て相手の殻に今度は新しいズボン
をはくように柔らかい腹部の先から入り込みました。
  前の自分の殻は掴んだまま、相手のからの中に引っ込んで、住み心地を確認します。  この作業の
間、追い出されたヤドカリは二つの殻の上を行ったり来たりしてパニック状態となっていました。
  住み心地に満足すると、今迄入っていた殻を離して、その場を立ち去ります。
  追い出されたヤドカリは、置いていかれた殻に入ってヤドカリの宿換えが終わるのですが、中にはとん
でもないハプニングが発生することがあります。

ハプニング(1)

  置いていった殻に入ろうとしているとき、横から別のヤドカリがやってきて、その殻に入られてしまうこ
ともあります。 その結果、2匹目のヤドカリが残した小さな殻とか、ボロボロの殻に入らざるをえなくなっ
た例があります。

ハプニング(2)

  上記の場合は、代りの殻が その場に残され、まがりなりにも柔らかい腹部を 一時的に保護できるの
ですが、ぶん取った殻に入り、住み心地を確認した後でも 今迄入っていた殻を離さずに、その場を立ち
去るヤドカリもいました。
  このような時、追い出されたヤドカリは小石の下や割れ目に隠れて取敢えず安全を確保した上で殻
を探さなくてはいけないことになり、非常に危険な状態となります。

 殻から引き出されるホンヤドカリ

@適当な相手を見付け、自分の殻をカンカンカン ・・・と激しくぶつけます。
A相手があきらめて出てきそうになると、ハサミで一気に引出します。
B空になった殻の口から覗き込み、住み心地の確認をします。
C気に入ると、今迄の殻から出て相手の殻に尾部先端から入り込みます。


            (2)ヤドカリを殻から出す実験

  ヤドカリを殻から出す方法はいろいろと紹介されていますが、ヤドカリ達にとって自然で安
全な方法を実験してみましょう。

  ヤドカリ達にとって、ごく自然で安全な方法とは、ヤドカリ達がやっている宿換えの方法を
真似てみることです。

ホンヤドカリを殻から出す実験


1.殻から出そうとする実験用のヤドカリを用意し、その貝殻をたたくための貝殻か小
石などを用意しま
  す。

2.用意した貝殻か小石で、実験用のヤドカリの殻をたたいてみましょう。
3.ヤドカリは驚いて殻の中に引っ込んでしまいますが、あきらめずにカンカンカン・
カンカンカン・・・と、
  根気良く たたき続けます。

  (これはヤドカリが行なっていたように、休みながら行なうのも良いでしょう)
4.すると驚いたことに、ヤドカリが自分から出てきました。

  いくらハサミを掴んで引っ張り出そうとしても出てこないで、無理矢理引っ張るとハサミが取れてしまう
状態なのに、たたくことにより自分から飛び出してきたのです。

  ただし、私の実験した範囲では、100%成功した訳ではなく、いくらたたいても、 出てこないヤドカリも
いました。 これは、自分の殻が余程気に入っている場合か、卵を抱いているヤドカリではないかと考えて
います。

  殻から出したヤドカリは、海水に戻し側に貝殻を落としてやると、すぐにその殻に入り込むので、最後
にはちゃんとした殻を与えて、海に戻してあげましょう。
 
しかしせっかく殻から出てもらったのですから、殻を返す前にいくつかの実験をしてみまし
ょう。

殻から出したヤドカリを殻に返す実験

1.海水を入れた洗面器やバケツの中に殻から出したヤドカリを入れ、 今迄入っていた貝殻より小さ
  な貝殻を入れてみましょう。
2.ヤドカリは、貝殻を見っけると、あまり小さすぎてはだめですが、 柔らかい腹部を守ろうとする本能
  ら、少々きっい位ではすぐ入り込みます。

3.次に、今迄入っていた殻を入れると、その殻に引越しします。
  (今迄入っていた殻が余程気にいらなかった場合には、入らない場合もあります)
4.そこで更に一回り大きな貝殻を入れてみましょう。
  もし、この貝殻に引越しをしたとしたら、このヤドカリは今迄の殻に満足しておらず、一回り大きな殻を
  探していたところかも知れません。
  (この様な場合、更に大きな貝殻を与え、その行動を確認しておきましょう)
  引っ越さなかった場合は、この殻に満足したことになります。
5.今度は、殻から出したヤドカリに、明らかに大きな貝殻を与えてみましょう。
  裸のヤドカリは、急いでその殻に近付きますが、その殻には入らず殻に掴まる状態になることがあり
  ます。
  そこに、今迄入っていた殻より一回り大きな貝殻を入れると、ヤドカリはその殻に入ります。
  次に、今迄入っていた殻を入れると、よってきて確認した後、引越しをすれば前の殻が余程気に入
  ていたものと考えられます。

  しかし 殆どの場合、一回り大きな 殻に入ったヤドカリの場合、小さな殻に 引っ越すことは無い様で
  す。